夫は61歳。3月で仕事を定年退職した。現在は、小遣い稼ぎ程度に週3日だけ再任用の仕事に行き、後は、晴れた日には釣りをしたり、畑をしたりして、雨の日には家で映画鑑賞やテレビ視聴などして、のんびりと暮らしている。夫より年下の私は、単身赴任中で、まだ毎日必死に働いている。
一緒に住んでいる頃、夫がしてくれた家事といえば洗濯機を回して、洗濯物を干すことだけであった。乾いた洗濯物を取り込んだり畳んだりということは、一切しなかった。買い物も、料理も、掃除も、3人の子供の世話もすべて私任せであった。
昨日、私が仕事から帰ってくると、夫が私のマンションに遊びにきていた。ドアを開けると、何と夫がキッチンに立ち、すき焼きの材料を用意しているではないか。「牛肉をもらったから。」と言い、焼き豆腐やネギ、しらたき、白菜、シイタケ、すき焼きのタレなどの材料をすべて自分で購入してきて作っていた。しかも、私のマンションの近くにはスーパーはないので、遠くまで歩いて行って買ってきたらしい。
「夕飯、何時に食べる?」と聞くので、「7時頃かな。」と答えると、夫は出来上がりまでに時間を計算し、「じゃあ、6時40分頃から火にかけよう。」と言う。私は、疲れていて何もする気がないので、お風呂に入り、すき焼きが出来上がるのを待っていた。すき焼きはとても美味しく、私は大喜びでたくさんいただいた。
夕食が済むと、夫はお皿まで洗っている。一体どうしたというのだろう。もしかしたら、この前息子が遊びに来て、ご飯を食べた後にお皿を洗ってから帰ったことを絶賛したので、それを知って自分も何かした方がいいと思ったのだろうか。家事をせっせとやってくれるあまりの変貌ぶりに、驚いてしまった。うれしいと思ったことは、ちゃんと言葉にして伝えた方がいいと思い、「すき焼きを作ってくれてありがとう。」「お皿を洗ってくれてありがとう。」「コーヒーを入れてくれてありがとう。」「重たいのに、お米やリンゴ、ジャガイモ、玉ねぎ、お菓子をわざわざ持ってきてくれてありがとう。」「タイヤを交換してくれてありがとう。」「モカ(愛犬)の散歩に行ってくれてありがとう。」「灯油を買いに行ってくれてありがとう。」と、感謝の気持ちを沢山伝えた。やってもらったことを当たり前だと思わないで言葉にしてみると、こんなにたくさんあった。
ありがとう!成長したね。
